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『Deeeeep!New York! 〜林檎の芯〜』
菊楽 恵著
1050円(税込み)
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東京の満員電車で見知らぬ男性に触られたことは数回ある。
つまり、痴漢に遭ったことがある。
しかし、私の場合は触られるというより、別の種類の痴漢に遭うことが多かった。
初めて痴漢に遭ったのは、忘れもしない東北の寒村から上京して二日目の中央線だった。
10代の私。
ドアの近くに立っていたのだが、ジャンパーを着た男が乗り込んで来た。
そして、いきなり私の手を掴んだ。男は己の股間に私の手を持って行ったのだ。
持っていっただけではない。男は「握れ〜」と私に向かって命令した。
ファースト・キスは経験していたものの男性経験が全く無い処女の私は、男性の股間にあるものを
握ったこともそれこそ見たこともなかった。
躊躇していると、男は「いいから、握れ〜。握るんだぁ〜」とドスを聞かせた声で言ってきたのだ。
パンチパーマにジャンバー。どこから見ても堅気には決して見えない。
「あぁ〜〜っ」と悶えながら、シャツのボダンを外し始めた。
ナイフなどの凶器を出してきたらどうしようと不安になった。
東京さ出でぎで、ごれがら青春だど思っだのに……。
パンチパーマの男(おどご)さ刺されて、死んじまぁ〜のがな。
我が命を守るために、
握るべきか? 握らざるべきか?
私の手は以前として男の股間にある。
電車が次の駅に停車し、ドアが開いた。目的の駅ではなかったが、男から逃げるべくホームに降りて走った。
「ブスゥ〜」とその男から叫ばれた。
ブスで結構。命はあった。
しかし、初めて触った(注意:握ってはいない)男性の股間(ただしズボンの上からだか)がパンチパーマの痴漢だった。
印象は、湿っている……だった。
今の私ならば、GO-GOボーイにするのと同じように男のパンツにチップを挟み、
「合点だぁ〜!握ったるでぇ〜!おっさん!」と言って玉を握り潰すことができるであろう。
***
それから十数年経ったニューヨーク。
どんなに満員の電車に乗っても、あの嫌な密着感は無いし、触られる心配もないと思って安心していた矢先の出来事。
始発の車両の中で本を読んでいた。通勤時間帯ではなかったので、乗客はまばら。
男が私の前に立った。
座席はたくさん空いている。座ればいいのにと思っていると、何やら気配がして眼を上げると、
男(黒人・20代)がスウエット・パンツに手を入れて上下に動かしている。
男が上下に触っているものは棒状のものだった。
スウエット・パンツの外には出さずに動かし続けている。
多分、男のペニスだと思われるが、長さが50cmはあった。下から上に上から下への移動時間が長かった。
露出狂に遭ったのなら「小ちゃ〜〜い」ってクスってすれば、露出狂は即座に退散する!
と聞いたことを思い出したが、馬並みとはまさにこのこと!「小ちゃ〜〜い」ってクスは効果がないと思われたが、
何よりも長さにびっくりして膠着してしまった。
近くにいた白人女性が気が付いて”Shit! FucK Off”「うげっ!失せやがれ〜」と叫ぶと、
変態男はすごすごと車両を降りていった。
変態男や露出狂の目的は女性が驚いたり、恥ずかしかったりする姿を見て喜ぶ。
まさに私は思う壷にはまってしまったが、彼女のようなキツ〜〜い咄嗟の一言が言えない。
「あっぱれ!亜米利加人女性!」
満員電車の出来事ではないが、地下鉄で変態男に遭遇した。
東京では変態男に遭遇することは日常茶飯事だったが、ニューヨークで初めての変態男で、それ以来、遭遇してない。
ニューヨーク州は銃規制があるので誰でも持ち歩ける訳ではないが、変態男も気軽に変態を楽しむことができないのかもしれない。
人気のない地下鉄に乗る場合は、車掌さんがいる車両に乗るように、その事件以来、心がけている。
我が身は己が守る。無防備だった。
車掌さんは日本と違って後部車両にはいない。真ん中の車両にいる。
***
FucK Off………意味はGo Awayと同じ。あっちに行け〜!失せろ〜。
映画や ケーブルテレビ放映のドラマを観るとよく使われている。
どの国にもいるということを身を持って知りました。