4

追伸:I Love You.  書けるものなら、そう書いてみたかった……。

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 数日間ニューヨークを留守にしていたのはDelaware Water Gap(デラウェア・ウォーター・ギャップ)に
行ったからだ。国立余暇地域に指定されているくらい山と川が美しいところ。

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私が撮影しました。美しいでしょう?

 暖炉の前で愛する新しいダーリンと抱き合い……だったらいいなぁと思いつつ、極寒の中、映画の撮影に行って来た。

 ところで、映画といえば、先週の数日間、近所のゲイ・バーが映画撮影のロケ現場になっていた。機材車からするとかなり予算がある映画だ。ニューヨークでは至る所で数十億円のハリウッド映画から学生映画まで毎日のように撮影が行われている。
 ……と、そのロケになっているバーから出て来たのは、スパンコールのドレスを着た……ヒラリー・スワンクだ。

 激写してみた! パパラッチ風のカメラマンもいて、二人でカメラを向けたが、残念ながら顔の激写ならず。 
パパラッチになるには修行が必要だ。手前の黒いダウンコートを羽織っているのが彼女。

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スターは誰でも遭遇すると嬉しい。

近くにいたスタッフに、映画のタイトルを聞いてみた。
P.S, I love youというそうな。
 IMDbで検索してみると、2008年公開予定で監督&脚本はリチャード・ラグラヴェネス。
『マジソン郡の橋』や『フィシャー・キング』を監督。
原作は、セシリア・アハーン。邦訳も林真理子翻訳で出ている。

  死んだ夫から手紙が届き、いつも末尾には、追伸:愛しています!と書かれている。
あらすじを読んだだけなのに私は泣いてしまった。またもやニューヨークにはいないダーリンを思ってだ。ご存知の通り、彼とは何の関係もなかったし、現在、関係は完全に絶たれている。それに彼は死んでもいない。ストーリーと重なる部分は全くないのに、なぜ泣く? 追伸で私も書きたかった。I Love Youと。
おならの音もにおいも知ってしまった後に別れた恋と違って、片思いのまま振られた恋だと相手を美化していけない。

公開は2年後。

2

彫刻家が言った。「あなた、好きな人のために死ねる?」

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 彫刻家と飲みに行った。
 彫刻家はウォッカを飲んだ。私はマティーニを飲んだ。彫刻家は女だ。
彫刻家という響きは、情熱的で繊細な藝術家というイメージがある。彼女はまさにそんな女性だ。

 私は振られたダーリンをまだ思っている。理性は事実を受け入れている。しかし、私の心は全然分かってくれない。
 彼は、菊の花を見ても、私の名字すら思い出さないだろう。私と同じ名前のグラビア・アイドルMegumiを見ても、
私のことなんか全然思い出さないだろう。そう分かっていても彼の笑顔を思い出しては涙してしまうのだ。

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頂いたのはカシス・マティーニ。ニューヨークのバーはとても暗い。

 

 彫刻家は私のそんな話を黙って聞いてから、言った。
「あなた、彼のために死ねる?」
「えっ?」
「ドラグ・ストアでレジのお姉さんが叫ぶようにNEXT(次ぎ〜)と思っているでしょう? 
大抵の人は、恋が破れたら次ぎと思うのよ。」

 彫刻家は、グラスをテーブルに置き、私の目をじっと見つめた。
「私は違うわ。その人じゃなければならない理由があって好きになったのだから、次はないのよ」。

 彫刻家は続けた。
「好きになった時、この人のために死ねるか、死ねないかを考えるの。死ねるって確信できたら、
彼を落とすためにひたすら頑張るのよ。愛することとは己(おのれ)の死をかけることなのよ」。

「死ぬ覚悟で愛さないから、報われないのよ」。
 藝術家の言うことは凄い。

 ダーリンが死んだら、悲しい。だけど、ダーリンのためには死ねない。
だって次に素敵な出会いがあるかもと思うからだ。彫刻家の指摘する通りだ。
私は凡人だ。NEXT軍団に所属している。カミュ・クローデルのように愛で破滅するなんてできない。
しかし、死ぬ覚悟で愛したら、ダーリンは私とセックスしただろうか。

「あなたは、好きな人のために死ねますか?」
 

  ***

彫刻家といえば、彫像だ。
街で見かける彫像をご紹介。
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ワシントン・スクエア・パークにあるAlexander Lyman Holley像。19世紀の鉄鋼王らしい。

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ユニオン・スクエアにあるマハトマ・カンジー像。すすきとガンジーというのは不思議な組み合わせだ。

考えてみると、ニューヨークでは裸の彫像をほとんど見かけない。歴史的人物ばかりのような気がする。

4

プロレスとストリップ! その心はともに裸の娯楽である。

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 邦訳すれば、世界で有名なポンタニ3人姉妹(ザ・ワールド・フェーマス・ポンタニ・シスターズ)から全米ツアー中というお知らせがメールで送られて来た。
 怪しげな覆面バンドと一緒にツアーしているらしい。ニューヨークではトライベッカにあるニッティング・ファクトリーでショーをするというので週末出掛けた。ひとりでね。

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ジャンルはいろいろ。手前のフラッグがライブハウスのニッティング・ファクトリー

***

The World Famous Pntani Sisters
ザ・ワールド・フェーマス・ポンタニ・シスターズ(世界で有名なポンタニ3人姉妹)とは?

 
 日本で3人姉妹といえば、かしまし娘だ。長女の歌江姉ちゃん、次女の照枝、三女の花江の漫才トリオだ。
しかし、ニューヨークの3人姉妹と言えば、長女ヘレン、次女タラ、三女アンジーのポンタニ・シスターズなのであ〜る。
漫才はしない。ギターも弾かない。バーレスク・ダンサーなのであ〜る。
 バーレスクとは、19世紀から人気の歴史あるストリップ・コメディ・ショーなのだ。1960年代に台頭したポルノ映画に押され、バーレスクの火は消えかかったが、90年代に復活をとげる! バーレスク・ショーを呼び水にしているバーも特にヴィレッジに多く、ゲイと女性に大人気なのであ〜る!
 ニューヨークに数多くいるバーレスク・ダンサーの中で、ポンタニ・シスターズは人気も実力もナンバー1!
ポンタニとは彼女たちの名字。イタリア系だ。
 

 ***

 会場は満員。ショーは週末の昼2時に開始だ。
 バーレスクといえば夜のイメージなのだが、意外や意外、家族連れがいっぱい。
 驚くくらい健全だ。
 
 ショーが始まった。覆面バンドが最初に演奏したのは、ダ〜〜〜〜ッ!といえばの、

アントニオ猪木テーマだ!炎のファイター!

  ターーーーァラァーラァーァ

で、MCはスペイン語!
私はやっと分かった。このバンドは「ルチャ・リブレ」に捧ぐバンド!と言ったら大げさかもしれないが、
そうメキシコのプロレスラーの覆面を被るコスプレ・バンド(?)なのだ。体型的には若くはなさそうだ(このコメントは余計だったか)。
 ヴォーカルは、50年代のテレビからテレポートしてきたの? と質問したくなるお方。
そして覆面バンドが演奏するベンチャーズ風のテケテケ音楽に合わせ、ポンタニ・シスターズが踊るのだ。

 ポンタニ・シスターズはバーレスクでも衣装は脱がず、胸も出さない。
しかし、ダンスとシャレの効いた衣装で楽しませてくれる。
 笑顔がいいのよね。
 そうそう、「ルチャ・リブレ」風バンドの名前は、Los Strait Jackets。ヴォーカルはKaiser Geroge。
 子供たちは奇声をあげ、ポンタニ・シスターズと踊っている。
 

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 プロレスときれいなお姉さんのエッチな踊りは誰でも子供の頃から大好きな娯楽!
 その心は、ともに裸! その普遍性は日本でもニューヨークでも同じだ。
 元気が出た! 

お毒味役として見参つかまつりまするぅ〜!

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昨日のつづき〜

  アメリカの財前教授は体が思うように動かないと感じていた。疲労がたまっているのだと思った。医者の不養生と言われる如く検査もせず放っておいた。ある朝、目を覚ますと体が全く動かない。愛する妻は、ベットの上から動けなくなった夫をただ眺めるだけだった。
 妻は病院に連れて行こうとしなかった。その代わり妻がしたことは彼を地下室に監禁。
 「動けない夫は私を性的に満足させることは不可能」と主張し、妻は離婚訴訟をおこして勝訴。財産を、彼が所有する金目のもの全てを換金。妻が去った後、アメリカの財前教授の体調は次第に回復した。
 ふと彼の頭をよぎったのは「毒を盛られた……?」。
 
 妻は再婚した。二度目の夫は、結婚後間もなく死亡。三度目の結婚をした。

***
 
 財産を換金され、監禁された教授。

 換金(かんきん)に監禁(かんきん)と、ナイス!だじゃれと思うが、
内容が内容だけに笑えず背筋が凍った。

 「カルメン〜、そ、そ、それって犯罪なんじゃないの?」
とかなりびびる私。
 最初の夫は原因不明の病気、二度目の夫は死亡……。
 三度目の夫は……? 大丈夫、生きているらしい。

 NBCのDATELINE、 CBSの60Minutes、ABCの20/20が頭に浮かんだ。 
 NBC、CBS、ABCはアメリカの三大ネットワークだ。日本では朝やお昼のワイドショーで「事件」が報道されるが、アメリカでは夜10時から前述の番組で放映されている。レポーターの突撃インタビュー・スタイルではない。
スター・ジャーナリストが事件の現場を訪れ、裁判の様子も交え、当事者や関係者にインタビューして構成されている。

 謎の病気発症から数年が経つが、アメリカの財前教授は未だ体調は優れず、教壇には立っていない。
心の傷も癒えていない。

 しかし、カルメンによれば、アメリカの財前教授のお話はとても面白いらしい。
ハーバード出身で医学部教授だった方ですもの。話がつまらないはずがない。それに毒を盛られたなんて。誰でも経験できることではない。それに優秀なお方は、知識の宝庫。無駄と思われるつまらないこともしっかり記録している知識のデータベース。
 
 だから、いろんなお話が飛び出して面白いのだ! 
 だから、とっても魅力的! 
 だから、すぐに好きになってしまう。
 でも、振られる〜。はぁ〜。

「カルメン、ぜひ会わせて! 」
「OK!」
「友だちとか恋人とか、そういうのを前提じゃなく会いたい」
「えっ? じゃ〜、何?」
「まずは、お毒見役として」
「もう、ホモどん。その冗談キツ過ぎ!」

アメリカの財前教授とのデート。果たして実現するだろうか。実物の彼はどんな人だろう。 

本文とは関係ありませんが、NYも菊の季節!菊花画像をお楽しみください!

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↑ロックフェラー・センター。

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↑NBCのスタジオの近くで。

3

突然、舞い込んだお見合いの相手はハーバード大卒の医学部教授ですの。

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 カルメンと会った。

 カルメンは私のことを「ホモどん」と呼ぶ。
私がゲイ・メン好きだからではない。でも関係していないこともない。
ビセー作歌劇『カルメン』のダーリンはホセだ。カルメンにはホセだから「ホセ・めぐどん」
と呼ばれていたが、それがいつの間にかホセからホモになった。

 カルメンは私の失恋を一緒に悲しんでくれた。
 私は彼のことを忘れるなんて到底無理だとカルメンの前で泣いた。

「ホモどんに男性を紹介しようと思っているの。新しい恋に出会えば忘れられるものよ」
 
 なんてやさしいんだ。カルメンも大人の女だ。いろいろあったはずだ。
でなければ、あんなにフラメンコを情熱的に踊れる筈がない。
「え〜? 本当? カルメン、ありがとう! でも、どんな人?」

 しかし、この会話が日本だったらと考えると怖い。
Blogにありがちな仮名やニックネームを書いているのではない。
私はカルメンをカルメンと呼ぶし、彼女はホモどんと本当に私を呼んでいる。
 ニューヨークだからこその会話だ。

「ホモどんにぴったりの人だと思うわ」とカルメンは続けた。
 カルメンの好意は嬉しいが、紹介してくれるなら誰でもいいというわけではないのだ。

 私はカルメンに付き合うならこんな人という条件を以前に伝えていた。

①日本人なら東大か京大卒。
②アメリカ人ならハーバードかエール大卒。
③日米以外の国なら東欧。
旧ソ連で教育を受けたその国の最高の最高学府出身で、
東欧の陰鬱さが眉間に出ている笑顔に影のある人。

「ホモどんの条件に合う人がいたのよ」
 カルメンの話によれば、②と③が半分だ。
 カルメンのセニョール(彼氏)は、お医者さんだ。
 彼の知人で、ハーバード大学のメディカル・スクールを卒業し(←②の条件がクリア)、
若くしてさる医学部の教授に就任した。優秀だけではない。野心家でもある。
 アメリカの財前教授か。
 ③が半分の理由は、ハーフ・ポーランド人だからだそうだ。東欧の血、スラブが半分。

「あっ! ごめん。胸毛があるかどうかは確認していない」
カルメンも胸毛男好き。
そうだ! ④もつけ加えなければならない。

④もじゃ〜胸毛希望。なくても可。
日本人も視野に置いているので胸毛に関しては最近、消極的。

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アメリカの財前教授はこんな感じからしら?

 紹介してくれるというハーバード卒の医学部教授の年齢は40代後半。しかし、教授だったという過去形なのだ。

「ホモどんはSMの女王様に会って鞭打ちとかも経験しているし、全裸で便器を掃除してくれる
ウォール・ストリートのビジネスマンにも会っているし、どんな人でも驚かないと思うんだけど……」。
「……ということは 何? 彼、すごい変態なの?」
「ううん」
「じゃぁ、仕事が行き詰まってdepressed(鬱)したとか?」
「ううん」
「それじゃ、何? セクハラで辞めたとか?」
「ううん」
 カルメンはなかなか言おうとしない。
「彼、バツイチなの」。
 そんな言い難いことではないのに。バツイチぐらいなんてことはない。

「その〜、奥さん、元だけどね。元奥さんに毒を盛られて殺されそうになった人なの」。

 私の好きな本はカポーティの『冷血』。私もクライム・ノンフィクション・ブックを書く時が来たか、
と思いつつ、レズビアン・バーに行ったり(mixi日記コラム読んでね)と、もういろいろありますが、お見合い相手の驚駭の真実については、明日〜。

 つづく。

2

カポーティのせいで、映画のせいで、今日もまた泣いてしまった。

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 私は、殺人!Murder! マーダー(ダーは巻き舌で言って欲しい)のノンフィクションが好き。
『冷血』は私のお気に入り。

 
 作家トルーマン・カポーティの伝記映画Infamousを外してなるものかと、
今日もひとりで映画館へと出掛けた。

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Infamousのポスター

 去年もカポーティの伝記映画が公開された。フィリップ・シーモア・ホフマンがカポーティを演じて今年のオスカー主演男優賞を受賞したCapoteだ。
 
 テーマが同じカポーティにもかかわらず、決定的に何が違うのかが気になり調べてみた。

 原作が違う。

 Infamousは、ジョージ・プリンプトンで、Capoteの方は、ジェラルド ・クラークの伝記を原作としている。共に邦訳が出ている。ジョージ・プリンプトンが得意とするのは関係者のインタビューを集めて人物像を浮き彫りにする手法だ。映画でも関係者のインタビュー(と言っても俳優が演じてるいるわけだが)が登場する。

  ***

  ところで、トルーマン・カポーティと言えば、『ティファニーで朝食を』だ。

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ガラスに風景が反射して見え難いが、ティファニーのショー・ウィンドウ。
ここでホリーは朝ごはんを“かじる”。

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57丁目@5番街にあるティファニー。創業者の名字が、ティファニーさん。

 ホリー(映画ではオードリー・ヘップバーンが演じた)は、毎週木曜日、グランド・セントラル・ステーション発8:45分の汽車に乗って、悪名高きSing Sing刑務所に面会に行く。電気椅子での処刑が行われていた刑務所だ。
  あいにくSing Sing刑務所に収監されている知り合いがいなので面会はできなかったが、せめて外観だけでも見ようと思って行ってきた! 
 Sing Sing刑務所への驚愕アドベンチャーは、講談社から発売されるDeeeeep! New York  by 菊楽 恵に収載されています〜! 自分の本の宣伝でした!
 

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Sing Singの独房はこんなかんじらしい。刑務所近くの博物館で。

   ***

 さて、本日の本題である映画Infamousについて話を戻す。
 Capoteとは二つの点で大きく異なる。
 
 カポーティがゲイであることが明からさまに表現されているところと、『愛について』が描かれている点だ。 
 その『愛について』という表現は抽象的だが、それがこの映画の主題であってクライマックスなのである。

 観ていただければわかる、とだけしか言えない。
 
 事実、泣いちゃいけないと自制したが、無駄な抵抗だった。涙が後から後から溢れてきた。
 気が付くと私も他の観客も嗚咽を漏らしていた。映画が終わると場内は拍手で包まれた。
 ニューヨークの映画館では時々あることだ。

 真っすぐアパートに帰ることができなかった。私の足が向いた先は、ニューヨークにはいない片思いのダーリンと一緒に歩いたストリートだった。ダーリンの笑顔の残像がまだそこにはあって、指の間から砂がこぼれ落ちていくような虚脱感に襲われた。

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カポーティのせいで、映画のせいで、今日もまた泣いてしまった。
ニューヨークは今、雨が降っている。