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菊楽 恵著
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今年のオスカーの作品賞にノミネートされた作品はどれも魅力がなかった。
作品賞に輝いたマーティン・スコセッシ監督の『ディパーテッド』。これは、香港映画のリメイクである。
私の亜米利加人の友達は誰ひとり観ていない。
しかも友達の中にはマーティン・スコセッシ監督の後輩であるNYUの映画科卒がいる。
私も観ていない。
貧しいながらもニューヨークで映画を作っている者としては、巨匠であるマーティン・スコセッシ監督が
リメイクに手を染めたことが悲しかった。だから観ていない。
リメイクはオリジナルに勝てるわけがない。
しかし、去年は違った。
アン・リー監督のBrokeback Mountain『ブロークバック・マウンテン』があった。
カウボーイがゲイ。男らしさを象徴する仕事であるカウボーイが、ゲイ。
保守的な人々にはあってはいけない話が映画になった。
日本に住んでいると分からなかったが、亜米利加はとても保守的なのだ。
ヨーロッパの乱れたことに嫌気がさして、まじめに宗教に取り組みたいと思った人々が作った国が亜米利加。
ピュア(純粋)を求めて建国された清教徒の国なのだ。
私の英語の先生(個人教授)であったエールの英米文学卒のダ〜リン(片思いのまま玉砕!ドッカァ〜ン)。
オックスフォードにもケンブリッジにも行ってお勉強している秀才だ。
彼が選んだニューヨーカー(文芸誌)掲載の短編小説を読み、英語で要約してかつエッセイを書くというのが宿題であった。
アニー・プルー 作のBrokeback Mountain『ブロークバック・マウンテン』が宿題に出されたのは去年の2月上旬。
オスカーを意識してだと思われる。
アスタープレースのスターバックスが勉強の場であった。
そして、彼は、私にこの文章を音読するように言った。
Ennis ran full-throttle on all roads whether fence mending or money
spending, and he wanted none of it when Jack seized his left hand and
brought his erect cock.
この文章で私は声に出して言えない部分があった。
私はhis は読めてもどうしても次のerect cockが口に出して言えなかった。
日本語でいえば、勃起した陰茎(おチンチン)だ。
下品で下ネタ好きな低俗な私でも言えなかった。
大好きな人の前では、勃起した陰茎(おチンチン)だなんて言えない。
英語でも言えない。
言えるはずがない。
恥じらう乙女になってしまった。
私は先生に頬を赤らめて、下をうつむいて言った。
「ごめんなさい。言えません」と。
好きではない先生だったら、ひず・えれくと・こっく(his erect cock)と恥じらいもなく堂々と大きな声で言えただろう。
先生のerect cockは舐め(たくても)られても、口に出しては言えなかった。
先生は「言えないなら言わなくていいよ」と言ってくれたが、「どうして先生、その部分を読めって言ったの?」
私がひず・えれくと・こっく(his erect cock)と日本語のアクセントで言う英語を聞いて
興奮したかったの?
それとも日本人が不得意であるEとRの発音を確認したかったの?
やっぱりerect cockを私の口からどう発せられるか聞きたかったのでしょう?
……とうことは、私の事が好き? でしょう? でしょう?
先生、したいなら遠慮なく言ってくださぁ〜い。
私がジャックになって、先生のerect cockを受け入れますんで、ご心配なく!
the clear slick and a little spitは一応、女なんでいらないかと……。
と心の中で先生に言った。眼で言った。
それが後で間違いだったと、思いっきり振られた後に気付くが、恥じらいながらもその時の私は幸せで胸がいっぱいだった。
書きながら、先生を思い出して泣いている。私の頬にある涙の跡が見えるだろうか?
欲情して先生に「セックスしてください」と直球を投げてしまった。
彼は二度と私には会ってくれない……。
それが私のオスカーの思い出だ。
短編小説。これを脚本化して映画化したことは、素晴らしいことだ。