アメリカ西海岸ゲイバー巡礼の旅 第10回 ゲイの母

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LA滞在2日目。

ジャスティンはラジオの爆音目覚ましが鳴ると同時に起きて即効でシャワーを浴びて、即効で着替えて
「寝てていいよ〜。ブランチもクリスマスパレードも楽しんできて」と私に声を掛けて即効で仕事に行った。

まるで映画のようなパーティーの後に、人工雪の降る美しいゲイバーに行き、ビバリーヒルズのビジネスマンにブランチを招待されて、LAのゴージャスさに驚くばかりだった。

ジャスティンが仕事なので、ビバリーヒルズにも夕方から開催されるクリスマス・パレードにもルームメイト氏が連れていってくれるというし、至れり尽くせりで感動するばかり。

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午前11時。
ルームメイト氏が昨夜のビジネスマンに電話を掛ける。
住所を確認するためだ。
彼は電話を取らなかった。メッセージを残す。

待てど暮らせど電話が掛かって来ない。
約束の1時にそろそろなるというのに。

「あ〜ん。これもLAなのよ。約束しても全く何も連絡して来ないっていうのが……。口ばっかり」。

わざわざ車で戻って来て我々をブランチに招待したのにもかかわらず連絡無し。
だったら戻って来なくても良かったのにとルームメイト氏と激怒。
人の心を弄ぶなんて、なんて酷い男なのだ。
ニューヨークでは招待すると言ったら必ず招待してくれると思う。

朝ご飯を2人で食べている時、
「ストレートと言っても隠れゲイかもよ。どうしてあんな時間にストレートの男が1人でウエスト・ハリウッドを歩いているのよ。ねぇ〜、そう思うでしょう?」
とルームメイト氏は鼻声でまだ鼻水を垂らしながらも期待にワクワク胸を躍らせていた。
私も私で「本物の本場カリフォルニア・ロール」をいただいた後、3人でジャクジーに入って、それから〜と自分が思いつく限りの性的行為をめぐらしてルームメイト氏同様に胸を躍らせていたのに……。

あ〜あ、残念であった。

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ルームメイト氏の友達から電話が掛かってきて3人でチーズケーキ・ファクトリーにランチに行くことになった。
ルームメイト氏の友達もゲイ。
彼は黒人で元ファッション・モデル。

ルームメイト氏は、口約束で終ってしまったブランチ招待事件とLAはそんなんばっかと愚痴を言う。
ビバリーヒルズ在住もどうか分らないストレートのビジネスマン風の男とブランチをするよりは、
ハンサムなゲイガイズと一緒に食事をする方が断然楽しい。

チーズケーキ・ファクトリーは「チーズケーキ」を冠しているくらいだから、チーズケーキが自慢のチェーンのレストラン。メニューはチーズケーキだけではない。ハンバーガー、ステーキ、スープなどが食べられるアメリカンだ。
ところで、ニューヨークでは一軒も見たことがない。
ニューヨークはチーズケーキで有名だ。ブルクッリンのJunior’sが幅を利かせている。
またマンハッタンでは個人経営のデリやダイナーのようなお店を守るために大型店やチェーン店の開店を規制しているという話を聞いたことがあるが、それにしてはスターバックスだらけだし、最近はセブン・イレブンもオープンしている。

チキン・サラダを食べたが量が多く、自慢のチーズケーキは美味しいのかどうかを確認するまで辿り着くことはできなかった。
元ファッション・モデルの友達が今夜オープン・バー(ただ酒が飲める)があるクラブを教えてくれた。
もちろんゲイクラブだ。
ジャスティンも大喜びするに違いない。

高級なお酒をゆっくり味わうという体に大変良い飲み方ではなく、アルコールをただただ酔うために飲みまくるというアルコホーリックな姿勢は全くアンクール(uncool)ではあるが、酔って騒ぐ!というのが好きなので止められないのであ〜る。

***

日が落ちて、クリスマスパレードが開催される町まで車で行く。
LAの隣町、映画会社ワーナー・ブラザーズがある映画の街、バーバンクだ。
その町のいわいる五番街(フィフス・アベニュー)のような両脇にお店が並ぶ大きな通りで開催され、
なんと各お店で無料のクッキーやサンドイッチが配られるという。

イェ〜イ!ただ飯ぃ〜。

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仕事でジャスティンがいないから、ルームメイト氏とずっと一緒にいた。
英語版オネエ言葉にもいつの間にか慣れ、気が付くと影響を受けて私もオネエ英語を話していた。
ゲイのフェミニン(オネエ)は女に意地悪!という先入観を持っていたが、全く違って大変親切だった。
ブルジョワジー風のルームメイト氏だが、ただ酒にただ飯(フリー・ドリンク&フリー・フード)に狂喜乱舞する
私に批判的ではなく、面白い!と言ってくれたところに非常に好感が持てたのである。

しかもクリスマス・パレードの時はルームメイト氏のお母さん、お姉さんも来ていて紹介してくれた。
母は目のまわりの小じわを取るプチ整形をしたらしい。
「どう?」と息子に出来上がりを聞いていた。
「素敵だわ!ますます綺麗になったわね〜」とルームメイト氏は大絶賛。
母を褒めるのはゲイの息子だからだろうか?と思わずにはいられなかった。

ルームメイト氏が私のゲイマン好きを彼の母に伝えたわけだが、「ゲイの男の子は素敵だから、その気持ちは分るわ〜」とルームメイト氏の母は言った。

その母の言葉に母の思いを感じぜずにはいられなかった。
ストレートだと思っていた息子が2006年の年末にゲイであることを告白し、夫は息子がゲイであることを知らずに2005年に他界。ルームメイト氏が語ってくれたのだが、そういう様々な事実があってこその母の言葉なのである。
我が子に関することを何でも受け入れるのが母なんだなぁと思わずにはいられなかった。
母は偉大だ。

クリスマス・パレードはニューヨークの五番街で行われるパレードと比較すれば手作り感があり、小規模だったが、ソープオペラ(昼ドラ)『ジェネラル・ホスピタル』の俳優さんがオープンカーに乗って手を振っていたのが、厳密に言えばバーバンクではあるがハリウッドだなぁと感動した。
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地元女子高生の何かのグループもパレードに参加していた。

***

アパートに帰ると、ジャスティンが既に帰っていた。
ジャスティンのお母さんがジャスティンに渡すものがあるので来ると言う。
しばらくするとジャスティン母が登場。
ニットのグレーのミニスカートにベージュのUGGブーツをはいて若々しい。
「ニューヨークではジャスティンが本当にお世話になったわねぇ〜。ありがとう」とハグしてくれた。
「私たち、似ているでしょう?」と息子に引っ付くジャスティン母。

ジャスティン親子は位置確認ができるGPSのケータイを共に持っている。
だから、いつでもどこでも双方、どこにいるのかが分るのだ。
ジャスティンがニューヨークにいる時、「今はメグミのアパートにいる」ことも「ヘルズ・キッチンのゲイバーで飲んでいる」ことも母は分っていたし、母はジャスティンに毎日、電話を掛けていた。

ジャスティン母は一人暮らし。何年もそうらしい。
夫と離婚し、息子を亡くし、他の子供は日本のお盆にあたる感謝祭にも訪れず、行くのはジャスティンだけで、ゲイの息子(孫)の存在すら認めようとしない両親(祖父母)という追い打ちを掛けるのがこれ以上あってはならぬの過酷な家族の状況にいることはジャスティンが以前、教えてくれた。

ジャスティン母が帰り際にこう言った。
「ジャスティンのこと、これからもよろしくね。メグミ、ありがとう」
涙が出てしまった。

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ルームメイト氏とジャスティン邸の玄関ドアに飾られてあったクリスマス・リーフ。

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