拍手だけではお腹いっぱいにならない。同情するなら金をくれ

3月下旬、社会活動がストップしてから、食料品の買い出しに外出すると世界はひっそりしていた。唯一活動しているのはホームレスの人々だけと言っても過言ではなかった。

ニューヨークの地下鉄といえば24時間運行だったが・・・

ニューヨークの地下鉄の駅のプラットフォームのベンチや車両には住んでいると思われるホームレスが大勢いた。。

自宅隔離生活が始まってから通勤客が激減して、ホームレスが車両を占拠。衛生が大きな問題になった。 医療関係、食品、ドラッグストアなど社会に必須な仕事の従事者が通勤に利用する地下鉄。だから彼らの健康を守るために24時間運行のニューヨークの地下鉄だったが、車両や駅を掃除するために5月6日から午前1時から午前5時までクローズすることになった。

清掃のため362人のホームレスが外に出され、ニューヨーク市ではシェルターに送るバスを用意したという。

地下鉄で過ごすには理由があった。路上で寝るのは危険。シェルターは三密なのでコロナ感染が怖いし、窃盗や暴力など安全面も怖い。

クローズすることを全く知らず、追い出されてしまったホームレスの男性83歳の記事を読んだ。

ニューヨーク、デブラシオ市長が会見で言っていた。ホームレスは「心の病を持つ人」や「ドラッグ中毒者」が多い。根本を変えないとホームレスの数は減らない。

ホームレスにとって地下鉄は安全な場所であるというが、荒れ放題になってしまった。

ホームレスが身近に・・・

日本のど田舎出身の私はホームレスを初めて見たのは東京だった。東京で生活していても気に留めることはなかった。

しかし、ニューヨークに住むようになってホームレスが身近な存在というか、話したことはないし、親しいというわけでもなく、近所にいつもいる人たちとして私の中で存在している。ひとりふたりではなく数十人、三十人ぐらいはいるだろうか? 顔見知りになって挨拶するようになるホームレスもいるが、数ヶ月すると見掛けなくなることがよくある。

お店もレストランも閉まり、人々も屋内にいるようになってから、外を歩くのはホームレスだけになったと言っても大袈裟ではなくなった。

近所にある3人でシェアしているテント。挨拶してくれていたおじさんは今はいない。コロナ感染が心配だったが皆さん元気のだようだ。

◆若い女性ホームレスに遭遇する

食料品を買いに出かけた時に近所だが別々の場所で4人の若い女性のホームレスを見た。みんな20代と思われる白人3人とアジア人1人だった。

洋服が入っていると思われるゴミ袋をサンタクロースのように肩からブラ下げ、穴があいた網タイツにミニスカートをはき、叫びながら歩いている。ドラッグでハイになっているのだろう、多分。

自分の世界の誰かと会話しているようにヒソヒソと小声を出して楽しげな女性はSoHoの街を歩いていた。穴があいたレンギスに汚れたコートを着ていた。

十数個のプラスチックバッグを自分の周りに置き、ニューヨークのフリーWifiのスポットの前で「1ドルください」と言っていた女性は前歯がなく顔は薄汚れていた。

スーパーマーケットの入店で並ぶ一人一人に「お金ください」と言う女性。パンクロッカーのファッション。現金はコロナに汚染する恐れがあるとのことでカードしか受け付けないお店も多いので現金を持っている人は少ない。私も持っていなかった。列の初めから終わりまで、また終わりから始めまで何度も何度も往復して聞きに歩いていた。表情はドラッグ中毒者風だった。

4人みんなマスクをしていなかった。もしかしたら、マスクしなければならないのを知らないかもだ。

安全に路上で暮らせているのだろか? シェルターには宿泊しているのだろうか? いろいろ心配になった。自分のアパートに連れて来てシャワーを貸したりとか? それは実際できないのが現実だ。

◆マスクをあげたいけど・・・

しかし、マスクを彼女たちにあげたいと思った。できるのはそれくらいだ。でも、話しかけるのが正直怖い。怒られるかも? 放っておいてと言われるかもしれないし、ドラッグで攻撃的になってしまい、女性だから暴力的ではないとは言えないし。

日本から持ってきたMADE IN JAPANのマスクは5枚。そのうち3枚は使ってしまっているから、ドラッグストアで購入してあげたいと思った。

クオモ知事ことアンディーはこう言っていた。「毎日7時の感謝の拍手だけでは医療従事者の助けにはならない。予算を連邦政府からもらわなければいけない」。給料を支払わなくてはいけない。

「同情するなら金をくれ!」まさにこれなのだ。

お金はない。でも「マスクをあげたいし、マスクならあげられる」 。自分ができる範囲のことだ。でも話しかける勇気がでない。

YouTubeでドラッグ中毒や売春をしているホームレスのインタビュー動画を連日見まくっている。特別視してしまっていたことに気付かされた。彼らも人間。悩める人間なのだ。

◆マスクを寄付してくれるという

「女性ホームレスにマスクをあげたい気持ち」をブルックリンに住む友人に言ってみた。すると彼女は手作りのマスクを作っていて、寄付してくれるという。またニューヨーク市で無料で配っていたバンダナも送ってくれるという。

ありがとうございます!

渡せるように背中を押してくれた。

ブルックリン在住の友人が送ってくれたマスク関連写真。市ではバンダナでもなんでも口と鼻を覆う布ならOKと言っている。

友人からのマスクが到着してから外出したいと思う。彼女たちに話しかける勇気が出るだろうか?

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「ニューヨークは一時停止中!」は5月28日まで延長になった。

今日も明日もご無事で!

STAY HOME AND SAFE!