上訴は2人がこの世で愛し合ったことの証のために

6月26日の最高裁判所の同性婚についての判決は、4組のゲイ/レズビアンカップルの上訴から下されました。

オハイオ州のObergefellさん
テネシー州のTancoさんと
ミシガン州のDeBoerさん
ケンタッキー州のBourkeさん

この訴訟で代表的なカップルであるオハイオ州の Obergefellさんの話を知った時、号泣してしまいました。
Obergefellさんには夫がいました。
以下、カタカナでオバゲフェルさんとします。

「いました」と過去形なのは、既に亡くなってこの世にいないからなのです。

オバゲフェルさんの夫、ジョン・アーサーさんは、ALS・筋萎縮性側索硬化症という難病で亡くなりました。

この上訴は2人の愛を「証明」することだったのです。

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ジム・オバゲフェルさんとジョン・アーサーさんカップルは共にオハイオ州出身で、
出会ったのも一緒に住んでいたのもオハイオ州で、ジムさんは現在もオハイオ州に住んでいます。
2人が付き合い始めたのは1993年。

2011年6月、転ぶなど体調がおかしかったジョン・アーサーさんに、さまざまな検査の結果、
ALS・筋萎縮性側索硬化症という診断が下されました。

日に日に悪くなり、医師からは余命3年から5年と宣告されました。

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2013年年6月26日、連邦最高裁判所が、結婚防衛法(Defense of Marriage Act)が法律に従って結婚した同性カップルに平等な権利を認めないのは違憲であるとの判決を下しました。
1996年成立のDefense of Marriage Act(結婚防衛法)が、結婚を「1人の男性と1人の女性による法的結び付き」と定義したので、これが同性婚を認めない州の法的根拠となっていました。

この判決を受けて、ジム・オバゲフェルさんとジョン・アーサーさんは結婚することを決意しました。

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しかし、オハイオ州は同性婚が認められていなかったので、オバゲフェルさんは同性婚を認めている州で結婚することにしました。
結婚するためには「結婚許可証」を州から発行してもらわなければなりません。
ニューヨークを最初に考えましたが、発行の条件として、結婚する2人が一緒に書類を提出しなければならず、ALSを患い、体が自由に動けなくなっていたアーサーさんがニューヨークに出掛けるのは無理でした。

しかし、1人でも結婚許可証を出してくれる州があったのです!
メリーランド州です。

まずオバゲフェルさんが行き、結婚許可証をもらいました。

2013年7月11日、プライベート・ジェット機でオハイオからメリーランド州のボルチモア・ワシントン国際空港に飛び、滑走路に到着。
飛行機の中で結婚式が行われ、法的に二人の結婚が認められました。
速攻で、オハイオ州に戻りました。
到着して、結婚を宣誓し、オハイオに戻るまで、この間、10分。

飛行機代や医療設備などでかかった費用は日本円で約140万円。
友人達からの寄付でまかなったそうです。

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滑走路で結婚を宣誓する2人。わずか10分の滞在だった。

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死期が迫るジョンさん。

オハイオ州では同性婚が認められていない!

ということは、「死亡証明書」にジョンさんは「独身」と表記され、配偶者であるジムさんの名前も記載されない。
一緒にいた21年間は法的に全く認められず、何にもなかったことにされてしまう。

ジョンさんに残された日々は少ない。
2人で一緒に過ごせる時間も限られている。

人権派弁護士、アル・ゲーハードスティン氏に出会い、
2013年7月22日、オハイオ州で2人の結婚を認めてもらおうと提訴に踏み切りました。
つまり、ジョンさんの死亡証明書にmarital status(結婚しているのか、独身なのか、離婚しているのか)
の欄には「夫」と記され、配偶者の氏名の欄にはジムさんの名前が記載されることを要請する裁判を起こしました。

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2013年9月25日、オハイオ州地方裁判所のブラック判事はジムさんとジョンさんの提訴を「認める」という判決を言い渡しました。

その判決から1ヶ月後、そして結婚から約3ヶ月後の10月22日。
ジョンさんは48歳で亡くなりました。

死亡証明書には、ジョンさんは「夫」として、ジムさんは「配偶者」として記載されることになりました。
2人の願いが叶い、20年以上に及ぶ2人の愛の軌跡が法的に認められたのです。

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しかし、2人の愛の物語はそう簡単には行きませんでした。

オハイオ州の検事総長が、その判決を不服として、ジムさんをオハイオ州、ミシガン州、ケンタッキー州、テネシー州の
4つの州を管轄する第6巡回控訴裁判所に控訴しました。

そして2014年11月に第6巡回控訴裁判所は、「同性婚は違憲なので、死亡証明書に「夫」であったことも
「配偶者」であることも記載はできない!」と控訴内容を認める判決を出しました。

ちなみに巡回控訴裁判所とは、日本の地方を管轄する高等裁判所と同じような機能で、「巡回」とは
西部開拓時代に裁判は地域を巡回して開廷されていたので、その名残りだそうです。
アメリカに13あるそうです。

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しかし、まだまだこの愛の物語はここでは終わりません!!

最高裁判所に上告したのです。
最終決断を委ねました。

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審理するのさえ認められず、門前払いの可能性もありました。

しかし、2014年1月16日、最高裁判所の9人の裁判官が、他の3つの案件もまとめて聞こうじゃないかと、第6で棄却された4組のカップルの案件の上告を認めました。

他の巡回控訴裁判所では同性婚は合憲であるとOKを出しているのに、第6ではNO!それでは、巡回控訴裁判所間で意見が食い違うのではヤバい!というムードも法曹界にあったのではないかと言われているそうです。

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最高裁が審理したのは、次の2点でした。

1.憲法修正第14条のもと、州は2人の同性間の結婚を認めるか?

2.憲法修正第14条のもと、同性婚が州外で法的に認められ行われた場合、州はその同性婚の承認するか?

憲法修正第14条とは、「法の下の平等な保護」などを定めています。

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2014年6月26日に、9人の裁判官のうち5人が上記の審理でYESを、4人がNOを出しました。
中道派であった裁判官がYESを出したことにより、小差でしたが、全ての州で「同性婚」が認められたのです。

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同性婚は認められたのに、愛する夫はこの世にいない。
しかも、同性婚が認められ、2人の婚姻の証は「死亡証明書」とは…

感傷的になってしまいますが、
悲しいです。
悲し過ぎます。

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2人がこの世で愛し合ったことを証明したいがために始まった裁判が、歴史的な判決につながりました。
愛は勝つのですね。

そして、私にやる気を与えてくれました。
最高裁の判決の審理であったジム・オバゲフェルさんとジョン・アーサーさんの2人の愛のストーリーについては、あまり日本では報道されていないように思えたので、拙ブログで伝えなければと2年ぶりに更新しました。

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ジム・オバゲフェルさんとジョン・アーサーさん。
2人がこの世で愛し合ったことを証明するために始まった裁判が歴史的判決へと導きました。

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上訴は2人がこの世で愛し合ったことの証のために」への2件のフィードバック

  1. 私も号泣です…(ToT)

    そして、Megumiさんに更新のパワーをもたらしたこの記事に、私にも勇気を分けていただきました。

    教えてくださり、ありがとうございました^^
    ジムさんとジョンさんにも…深謝いたします。

    • ゆみこさん

      ネットで日本のニュースを読むと2人の話が全く報道されていなかったので、これは伝えなければいけないと激しい使命感に燃えました! こんな無名なブログからの発信では知ってもらうには限りはあるかもしれませんが、Better than nothing! 「ないよりは全然いい〜」ということでも気合いが入りました。

      ジョンさんを想うジムさんを考えると涙が出ます。

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