精子バンク

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今夜、カールくんとメキシコ料理店で食事をした。
カリフォルニア出身の人はメキシコ料理が大好きなようで、ジャスティンも料理するのはメキシコ料理だったし、
ごちそうになったカールくんの手料理もそうだったし、本当に大好きなようである。

カールくんにはジャスティンのこともルームメイト氏のことも詳しく話してなかったので、
今夜こそは言った方がいいかもしれないと思った。
それはやはりルームメイ氏との騒動があったからだと思う。

フローズン・マルガリータを1杯飲む。
冷たくて鼻にキィーンときた。
1杯で私はもういい気分。
アルコールが入ると弁舌が滑らかになる。

ジャスティンと知り合ったきっかけの話をする前に私の「ゲイの歴史」を語った。
ゲイガイズとの関わりだ。
そこまで遡らないと、なぜジャスティンとゲイバーで知り合ったかの説明がし難いからだ。
まさに私のこれまでの人生の歴史とも言える。

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そして、拙ブログをお読みいただいている方は記憶していると思うが、昨年12月、ジャスティンにLAに会いにいったところ、とってもハンサムなルームメイトがいて、元妻との離婚話にも同情し、ゲイと分かっていてもメイク・ラヴをして完全に恋に落ちてしまった・・・とまぁ一連の話をし、兄の死をきっかけに孤独感に苛み、子供が欲しいと本能が叫び、ルームメイト氏との間に子供を作ろうと決意したが、私の体の状態で体外受精しか方法がなく、専門医まで相談に行ったこと、そして最近、何気にカールくんを精子ドナーにしようかなぁと軽い気持ちで言ったら、ルームメイト氏から怒りのメールが来た話を一挙にした。

カールくんは頷きながら話を聞いてくれていた。

「ごめんね〜、子供のこととか精子提供のこととか、カールくんには一言も言ってなかったんだけど、勝手にそんなことで盛り上がっていたのよ〜」と謝罪する。本人の知らないところで勝手に話が盛り上がっていた。

「子供といえば、ボクも子供が欲しくて医大生の時に、精子バンクに精子を提供しようと応募したんだ。
ゲイだから女性との間に子供ができることは諦めていたんだけど、もしかして誰かがボクの精子を使って妊娠し子供が生まれれば、ボクの子供がこの世に存在するかもと密かな願いを託したんだ。でもゲイだから拒否されちゃった」

「ええええ〜!!そうなの。そうなんだ」

身長は180cm。
痩せていて容姿も良く、顔もかわいい。アイビーリーグの医学部卒という秀才のカールくん。
しかし、「ゲイ」という理由で精子バンクは彼をはねたのだ。

カールくんに聞くとやはり女性にもモテモテだったらしい。
女性が放っておくわけがない。
我が子のDNAに組み込みたいと無意識に思うはずのハイレベルの男性だ。
でも自分を偽って子供のために女性と結婚して、家族を作ろうとは全く考えていないし、
女性とも今まで性交渉は一度も持ったことがないと言っていた。

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「体外受精って医療費が高いけど、どうするの?」
「それは私の私の少ない蓄えと、親も援助してくれる」
「父親についてご両親は何も言わないの?」
「うん、私が選んで好きなら誰でもいいって言ってくれている。普通の家族を持つことは我が娘には無理なんだと諦めているんだと思う」
「はははは〜」と大笑いするカールくん。

結局、私はカールくんに「精子ドナーになって欲しい」とは言わなかった。
今、決意もしていないのに、お願いするのは軽々しいと思ったからだ。
彼も「精子ドナーになりたい」と言わなかった。

その日は子供のことは笑って話が終わり、ヘルズキッチンのゲイバーに行った。