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再会の喜びと邪魔者

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ルームメイト氏はひとりでサンフランシスコに来たのではない。
ハウスメイトのタイラーと一緒に6時間ものの距離をドライヴして来たのである。

待ち合わせのホテルのロビーで、最初に目が合ったのはタイラーだった。
ルームメイト氏は背中しか見えなかった。
タイラーはルームメイト氏に目で合図をした。

振り返るルームメイト氏。

これが映画だったらスローモーションという効果を入れて劇的にするシーンだ。

「メグミィ〜〜〜〜」と両手を広げるルームメイト氏。
ちなみに彼は英語のお姉言葉を話す人なので、私の名前の「ミ」の部分は高音である。

「あ〜〜!ルームメイト氏ぃ〜〜」

痩せたみたい。
でも、髪の毛が・・・、髪の毛が・・・。
後退している。
薄くなっている・・・。

この僅かな一瞬の間に全体チェックをしつつ、後退のことは考えないようにした。
実物の彼に会える喜びと来てくれたという事実に感動し、胸がいっぱいになる。

映画だったら私が走って彼の胸に飛び込むのだろうが、
私は走るのが苦手なので早歩きで彼の胸に飛び込む。

ぎゅう〜と抱き締められ、額にちゅっとキスをしてくれた。
6月、LAの空港で別れた以来、3ヶ月半ぶりの再会である。

「メグミィ〜、来たわよ!私の愛を感じてくれる?愛の証よ!今度、私のことが嫌いになったり、
むかついた時に思い出すのよ!こんな遠くまで来てくれた私のことをよ〜!」
と、「愛の証よ」で終わればいいのに、一言余計だが、面白いことを言う、ルームメイト氏。
二丁目のバーでカウンターに入れば、毒舌バリバリなので人気者になるだろう、と思わずにはいられない。

私が滞在しているホテルの部屋に彼らも泊まるので、再会後、ホテルの部屋に行く。

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タイラーは3人いるルームメイト氏のハウスメイトの一人だ。
お家の修理をしてくれる代わりに家賃を3ヶ月無料にするという条件で入居した人だ。
テキサスからロサンジェルスに引っ越してきた。
3ヶ月以上経った現在も求職中!
つまり無職状態なのでルームメイト氏は現在も家賃を無料にしていると言っていた。

ジャスティン無き後、彼がルームメイト氏の一番近い友達になり、よく行動を共にしていると
メールに書かれてあったし、実際、「今、何しているの?」とテキストを送ると、タイラーと一緒に
いるとよく返事が最近来る。

ルームメイト氏は経済の部分でタイラーを助け、精神的に支えてもらっているのだ。

ルームメイト氏はタイラーがまるで自分の家のように、ルームメイト氏のお家の修理をしてくれるので
感謝していると言っていた。
先週、タイラーが酔った時に「愛している」とルームメイト氏に告白したということも聞いていた。

5分も2人と一緒にいれば、2人が非常に仲が良いのが分かった。
2人だけのギャクはあるし、言葉を交わさなくても通じてる雰囲気がある。
共にジャスティンの悪口を言っていた。

多分、2人はセックスをしていると感じた。
セックスをしているのか事実を知りたかったが、真実を知って傷つくよりは知らない方がいい。

タイラーと肉体関係があるのはビシビシ感じる。
ルームメイト氏のことは以前程大好きではないにしても、事実を本人の口から聞いたら、
嫉妬でもがき苦しむ自分がはっきり見える。
だから、聞かない方がいいのだ。
後退と同様にセックスの事実の有無も忘れることにする。

夕食をレストランで食べて、カストロ(サンフランシスコのゲイ・エリア)に出掛けようということになり、
ルームメイト氏は服選びに忙しい。

ルームメイト氏は何度も何度も「これでいい? この服、メグミは好き? 髪型はどう?」と私に聞いて来るが、
タイラーには「これがいいんじゃない?」とまるで世話女房のようにTシャツを選ぶ。

ストレートの関係で言ったら、ルームメイト氏が妻で、タイラーが夫のようだ。

家賃を無料にしているし、家はルームメイト氏のものだから、経済的にタイラーをサポートして
精神的な支えをタイラーがしているという感じがした。
妻がバリバリ働いて、夫は主夫業に専念している、そんな関係が見えた。

でも、2人は友達以上の関係ではい。
ルームメイト氏(32歳)はお医者さんとデートしているし、無職でもタイラー(38歳)は15歳下の若い男の子とデートしている。

ストレートには分かり難い、ゲイの友達関係だ。
性的な興味も友情も全て同じ性である男性に向けられる。
セックスをしても友達でいられるし、逆に言えば、セックスをしてしまえば友達でいられる。
セックスをしてしまえば性的興味が失われるからだ。
ストレート同士の場合、セックス後、友情が継続するのはかなり難しいと思う。

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6月、ルームメイト氏に会った時に、私が愛されていないと感じたが、そのひとつの大きな理由が
ライラーの存在だった。

6月の過去のブログに書いた、悲しいサンタモニカの出来事のハウスメイトとはタイラーのことだ。

私はタイラーのことが好きではない。
ルームメイト氏に会えて嬉しかったが、タイラーが・・・邪魔だった。

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