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失恋の痛みは回復するものなのだ。

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***

近頃、左腕を上げると痛く、我慢が出来ずに医者に行った。
四十肩か? とうとう老化現象か?と思っていたが、肩ではなく首の頸椎が詰まっているのが痛みの
原因だと言われた。
自然治癒が唯一の治療方法で、時が経てば治ると言われた。
朝起きると首に岩が乗っているように重苦しく、朝なのに憂鬱なのだ。

自然治癒と言われても、黙って治るのを待っているほど悠長な痛みではない。
友人のマッサージ・セラピストに相談してみた。
彼女と話しているうちに、痛みは肩や首だけでなく、後頭部の左側にも痛みがあることに気が付いた。
後頭部の左側の痛みとはいえば……。
ある事を思い出したのだ!痛みの原因を!

車に轢かれたことがあったのだ。

亜米利加人の男に振られて、その事で頭がいっぱいになっていた。
WALKの青信号で横断歩道を渡っていたのにもかかわらず、車に轢かれたのだ。
「あっ!車」と思った瞬間、景色が変わった。
見えるのはビルの谷間にある空だった。
倒れて後頭部をアスファルトに強打した。
鼻がツ〜〜ンとなった。

通行人が駆け寄って来るのが感じた。
起き上がろうとしたが誰かから「動くな」と言われた。
ジョギング途中と思われる白人中年女性に「名前は?」と聞かれた。
彼女は「メグミ、大丈夫だから」と私の名前を呼んで手を握ってくれた。
めくれたスカートを直してくれる気配も感じた。
このままマンハッタンで死ぬのかと思った。
数人の人が道路の真ん中に横たわる私を取り囲んで、警官と救急車が到着するまで待っていてくれたのだった。

***

私を振った亜米利加人は「メグミと話すと変なアクセントがうつる」と私の日本語アクセントのつたない英語を
まるで伝染病のように言い放った。
さらに「新しい日本人の彼女ができたから、嫉妬深いおまえはさよならぁ〜」と言われた。
彼の学歴は、カリフォルニア大学LA校の言語学の修士号を持つ。

彼に言われたことがぐるぐると頭の中を回っていた時に車に轢かれた。
もう7年以上も前のことだ。

ERに運ばれて、「誰か連絡する家族はいますか?」とナースに聞かれたが、
「家族は日本にいるので、ニューヨークに誰もいません」と言ったものの、ナースにお願いして、
彼に連絡を取ってもらったが、彼は電話にも出ず、当然病院にも来てくれなかった。
酷いことを言われて振られても未練があった。交通事故に遭ったのだから、来てくれると僅かな希望にすがりたかった。

その時の後遺症に苛まされている。
が、その時の失恋の痛みは全くない。
肉体的には辛いが、心の痛みは全くない。
失恋の痛みは回復するものなのだ。

***

イーストリバー近くに用があり行ってきた。
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ベンチがあり、しばらく座って川と橋を眺めて来た。まだ首は痛い。5月27日の風景。